Once upon a time there was this little boy. And the boy has a big dream. Cutting a long story short, he got to Ehime which is in Shikoku area in Japan by his bicycle from Tokyo in the middle of the winter at the end of 2010. It is said that there are 88 pilgrimages in Shikoku and it's pretty popular in Japan. So what he and his mates decided to do first to make one of their dreams come true is to go through all the 88 places and find favorite cafes using his own legs and tongue along the way of the pilgrimage. It names is 88 cafe. It starts on the 29th of January 2011.

2011年1月30日日曜日

the blue marble



















肉がフライパンの上で焼き上がる食欲を刺激する匂い、
食器がカタカタとこすれ合いながら次々に運ばれて行き、
ドアの隙間から大勢の話し声がかすかにもれてくる。

真冬だから、コンクリートの床は底冷えし足は凍り付き、額には汗が滲んでいる。
壁に掛けられたなんの変哲もない時計にちらりと目をやると、
針はもう4時を指している、これでラストだ。

1月からホテルの厨房で働いている。

ここのホテルは全国的に有名な温泉街の外れに建ち、
週末ともなると何件もの結婚式が開かれ、こっちは朝から晩まで食器を洗っている。


食器を洗っている? 食器を洗っている。


数年前にメルボルンの有名レストランで腕を振るっていた自分の姿を思い出し、思わずやや長めのため息がでる。そんな自分に気づき、ここに来た目的をもう一度心の中で反芻し、食器を洗う手に力を入れる。

そう、食器を洗いながら。


そして、内線

「Mさんがフロントに来てるけど、手あいてる?」

 M?

一瞬頭がフリーズする。Mは自分がここで働くきっかけになった男だ。今日会う約束はしていないはずだが、どうしたのだろう、そもそも彼がここに訪ねてくるのは初めてのことだ。

あいにく今は手が離せないので、そう答えると、フロントの電話番は
「荷物預かってるから、帰りによって」と言い残し、電話を切った。

ようやく仕事が終わり、帰りにフロントに寄ると、 そこには茶色い紙袋に入ったイタリア産の赤ワインのボトルとチョコ風味のフレーバービールが1本預けられていた。

いったい、どうしたんだ?

Mからの贈り物など初めてのことだ、いや、何かあるな、毒入りかもしれない、そんな疑心暗鬼を抱きながら、誘惑に負け、ありがたく頂いておくことにした。

ーーーーーーー

正直、自転車には一生分うんざりしている。 というのも、ある男達のくだらない話にのっかって、この年末から松山に住み始めたのだが、 本当にくだらない話だが、松山まで900 km、自転車で10日かけてやって来た。

腫れ上がったふくらはぎも、太ももも、だいたい落ち着きを取り戻した。


だからか、オフの日には歩くことが多い、松山という町は必要な物は徒歩圏内にあるし、歩くのにたのしい町らしい、あせらずゆっくりすればいい、そんな空気がある。

昔住んだメルボルンという町にはトラムがあり、おいしいラテで始まる朝があった。 自分をコーヒーの虜にし、この世界で生きて行く決意をさせたのもあの町だった。

この町にその面影を探していた。

the blue marble、この店に出会ったのは、空に雲一つない気持ちのいい日だった。

あおい地球、その名の通り、青を基調とした可愛い店作り、
その一方で、オーナーはカッピングジャッジの資格を持つ本物のバリスタ

豆を挽く音、挽きたての豆の香り、コーヒーが来るのを待つこの時間、
僕はあの町に帰ってきたかのような錯覚に落ち入った。

2011年1月29日土曜日

Le Jardin de Qahwah















この新しい土地に移り住んで来て初めての冬、今日も空はどんよりと灰色の雲に覆われている。Rに会うために松山に向わなくては・・・、とは言っても約束をしているわけではない。

週末には暗黙の了解がある。

しかしRの携帯をいくら鳴らしても、音沙汰なし、しかたがないからとりあえず松山へ車を走らす。

あいかわらず、空は灰色、途中、雪も降り始め、高速道路に速度規制がかかる。時を同じくして時刻は12時となり、Uのお腹は松山まで待てないぜと騒ぎだす。

そう、今日はお供にUを連れて来ている。

しかたがないから大洲インターでいったんおり、Torattoria La Vitaでお腹を黙らせる。

ここのトマトうまい、Uはここに来るといつもそう言う。

せっかく大洲に来たので、酒屋により店主おすすめの赤ワインとビールを手に入れる。

たまにはRにご褒美、少し甘やかし過ぎかもしれない。

そんなことを思いながら支払いをしようとすると財布に持ち合わせがなく、丁重にお願いをし、Uに施しを受ける。

人に借りてまで何をしているのだろうか?

そんなこんなでようやく松山に着く。この頃には、空はだいぶん明るく、太陽がすぐそこにいる気配を感じた。

未だRとは連絡がつかないので、アーケードをプラプラと歩き、おやつに昭和24年創業「みよしの」のおはぎを買う。

Uがまた興奮している。

市駅の方に歩き、アーケードの一本北側の路地に入るとお目当てのカフェLe Jardin de Qahwahがある。

アンティークな雰囲気のドアを開けると、コーヒーの匂いが押し寄せてくる。

この店はランチを出していない。

というのもコーヒーの匂いと食べ物の匂いが混ざり合い、喫茶店独特の匂いになることを避けるためである。

いっさいの不要な匂いを排除し、深い透き通ったコーヒーの匂いだけがそこにはある。入ると右手にカウンターがあり、若いマスターと女性が笑顔で迎えてくれる。

左手には何席かのテーブル席があり、すべてアンティーク調にまとめられているため、ほっと落ち着く。マスターはどのようなコーヒーが飲みたいかを訊ね、適切なアドバイスをしてくれる。

最適なコーヒーを探し出す共同作業、期待が一気に高まる。

マスターは目の前で豆を計量し、碾き、その粉をネルに移す。この店はネルドリップでコーヒーを抽出する。そして最適に加温された湯を慎重にゆっくりと注ぐ。

そのマスターの指さばきは芸術的で何度見ても飽きない、プロの技である。最後に味見をし、満足のいく作品であることを確認してから、ようやく頂くことが出来る。


本物のコーヒーをじっくり味わいたいなら是非1杯いかかですか?


悪魔の誘惑

「よいコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、 愛のように甘い。」シャルル・モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール(1754~1838、仏、政治家)

そんなコーヒーに出会いたくて、自らの感覚だけを信じ、今日も知らないカフェを訪れる。コーヒーに取り憑かれた2人の男、RとMが綴る、88の悪魔の誘惑。

皆さんももう一杯いかがですか?

コーヒーの世界で生きて行くことを決めたR、とある事情により松山で暮らすことになる。コーヒーの修行をするため四国遍路にちなんで、四国に点在する88個の素敵カフェを巡ることにした。

そんなRをひそかに観察する謎の男M、Rを松山に移住させた原因の1人でもある。


このブログはRとMの感覚で選ぶ、独断と偏見たっぷりに厳選したカフェを紹介するととともに、Rが成長してく姿を綴ったブログです。愛媛県は松山市からはじまり、最終的には四国の魅惑のカフェを88個繋げればミッション達成です。二人のやり取りと共に皆様の日常に少しでもワクワクとドキドキをお届けできれば 幸いです。

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