
プルルルルルルル
すばらしい目覚め。最高の朝だ。今日も俺を夢の世界から呼び戻してくれるのは、容赦ない電話の着信音だけで、だいたいそういうのはあいつの仕業だ。
「ついたぞ、出てこい。」
そう、だいたいMだ。夜勤明けの混沌とした鉛のような頭の扉を強引に開けてくる。ノックなしで。というかハンマーでこじ開けてくる。
「これやる。」
結婚式の引き出物がはいっているような大きいサイズの正方形で厚めの紙袋を玄関に置いた。なかには何やら黒いマシンらしき物が入ってる。
「これで修行だ。」
まじかよ。そいつはなんの前触れもなく、俺の前に姿を現した。黒い本体の中央正面にはレバーが付いていて、銀色の光を放っている。その右側には何やらかき混ぜるのが得意そうなこれまた銀色のスティックが付属している。
そう、エスプレッソマシーン
「使わねーから。」
どうやら、エスプレッソ好きのMはどこかでこのエスプレッソマシーンを手に入れたらしいが、自分で作るタイミングを逃したらしく、だんだん飽きて来たようで、要するに俺にコーヒーの修行をさせつつうまいエスプレッソにありつく作戦に出たらしい。
しかも「Saeco」、彼女が出来た。
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