この新しい土地に移り住んで来て初めての冬、今日も空はどんよりと灰色の雲に覆われている。Rに会うために松山に向わなくては・・・、とは言っても約束をしているわけではない。
週末には暗黙の了解がある。
しかしRの携帯をいくら鳴らしても、音沙汰なし、しかたがないからとりあえず松山へ車を走らす。
あいかわらず、空は灰色、途中、雪も降り始め、高速道路に速度規制がかかる。時を同じくして時刻は12時となり、Uのお腹は松山まで待てないぜと騒ぎだす。
そう、今日はお供にUを連れて来ている。
しかたがないから大洲インターでいったんおり、Torattoria La Vitaでお腹を黙らせる。
ここのトマトうまい、Uはここに来るといつもそう言う。
せっかく大洲に来たので、酒屋により店主おすすめの赤ワインとビールを手に入れる。
たまにはRにご褒美、少し甘やかし過ぎかもしれない。
そんなことを思いながら支払いをしようとすると財布に持ち合わせがなく、丁重にお願いをし、Uに施しを受ける。
人に借りてまで何をしているのだろうか?
そんなこんなでようやく松山に着く。この頃には、空はだいぶん明るく、太陽がすぐそこにいる気配を感じた。
未だRとは連絡がつかないので、アーケードをプラプラと歩き、おやつに昭和24年創業「みよしの」のおはぎを買う。
Uがまた興奮している。
市駅の方に歩き、アーケードの一本北側の路地に入るとお目当てのカフェLe Jardin de Qahwahがある。
アンティークな雰囲気のドアを開けると、コーヒーの匂いが押し寄せてくる。
この店はランチを出していない。
というのもコーヒーの匂いと食べ物の匂いが混ざり合い、喫茶店独特の匂いになることを避けるためである。
いっさいの不要な匂いを排除し、深い透き通ったコーヒーの匂いだけがそこにはある。入ると右手にカウンターがあり、若いマスターと女性が笑顔で迎えてくれる。
左手には何席かのテーブル席があり、すべてアンティーク調にまとめられているため、ほっと落ち着く。マスターはどのようなコーヒーが飲みたいかを訊ね、適切なアドバイスをしてくれる。
最適なコーヒーを探し出す共同作業、期待が一気に高まる。
マスターは目の前で豆を計量し、碾き、その粉をネルに移す。この店はネルドリップでコーヒーを抽出する。そして最適に加温された湯を慎重にゆっくりと注ぐ。
そのマスターの指さばきは芸術的で何度見ても飽きない、プロの技である。最後に味見をし、満足のいく作品であることを確認してから、ようやく頂くことが出来る。
本物のコーヒーをじっくり味わいたいなら是非1杯いかかですか?
0 件のコメント:
コメントを投稿