プルルルル
プルルルル
「もしもし?」
「Hello!」
突然電話の向こうに現れたのはMだった。
土曜日の早朝、こっちは職場の人に夜景が綺麗だからドライブがてら見に行こうと誘われ、さっき帰ってきて眠りについたばかり、いったい何のようだ?
結論から言うと、Mは一言だけ言い残し電話から消えた。
「今日、松山行くから夜空けといてくれ」
そして自分はもう一度夢の中へと戻った。
夜景の話をだしたが、言葉では表せないくらい綺麗だった。
つい2人でコンクリートの上に寝転がり空を見上げた。
無数の星。
こんなにたくさんの星を見上げたのはいつ以来だろう?
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Mと再開したのは夜だった。
いつ以来だろう?
そこは雑居ビルの四階にあった。
ドアを開けると少しほの暗く、正面に4席のカウンターがあり、2人組の女性が座っている。
右側には比較的大きな空間があり、窓に面してカウンターが何席かあり男性が1人で本を読みながら何か飲んでいる。
さらにテーブル席には1組のカップルがいて、ソファー席の4人組もなにやら話し込んでいる。
カウンターの後ろにはレコードが山のように並んでいて、本棚には建築や音楽やバイクやアンティークやアートなどそういう類いの本がたくさん並んでいる。
BGMにはスタイルカウンシルにパティスミスが流れていた。
迷うことなく正面のカウンターにすわった。
とりあえず飲み物を注文し、まずは先日のワインとビールの礼を言った。
それからしばらく仕事の話をし、残りの大半は夢のような現実の話をした。
どれくらい時間がたっただろう、窓際に座っていた男がいなくなり、カップルがいなくなり、ソファの4人組もいなくなった。
ついに隣に座っていた2人も帰り支度を始め、そろそろ帰る時間かなと思った瞬間、 Mはポケットから何か紙切れを取り出した自分の前にそっと置いた。
電車の切符だった。
意味が分からない。
松山→宇和島
意味が分からない。
しかも片道
・・・・・
Mの顔を見上げると、いつかのあの表情をしていた。
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